第1章 補遺 01
長い年月を掛けて透明度を取り戻しつつある空はもうじき暮れようとしていた。真夜中を知らせる星がそろそろ見える頃だ。
別に空を見上げる癖があるわけじゃない。それでも何故かその時だけは空を見ていた。
突如として世界の色彩は反転し、空の1点が歪む。
歪みが生み始めた曲線はやがて円となり、中心から描かれる装飾は円を10等分し文字を刻み込む。1本の針が文字の1つを指すと空は異物を残し、元の姿へと戻る。
針が1周すれば世界は滅ぶ。あれはそういうものなのだ。空に浮かぶ大きな時計が現れ、それが世界を滅そうとしている。ただそれだけのこと。
そういうものではあるが、旅の目的を果たせずに終わってしまうのが気に食わない。
勝手に終わりを迎えることに納得がいかなかった。
そう思うと時計に対して反抗心が湧いてきた。むしろ何の疑問もなく受け入れていたのが不思議だった。
どうやら旅の続きは世界の寿命を伸ばしてからになりそうだ。
「どうしたもんかな」
空中で静止している時計は、人が作れるものだとは到底思えない。仮に時計の仕組みがおおよそこの世界の理に即したものであっても、針が1周するまでに仕組みを理解し対策を講じるのは無理だろう。どうせ何かしなければ世界は滅ぶ。破壊してしまうのも1つの手かもしれない。
「とりあえず遺跡巡りから始めるか」
目先の目標を決め、歩き始める。やけくそ半分に呟いた言葉を聞く者はまだいない。